身じまいを語る市民対話会を行いました

"Support for sustainable decision-making and arrangements that preserve dignity for everyone during and after life」のプロジェクトでは、2025年2月14日、和光市にて市民の方々と身じまいをテーマにした対話会を行いました。この記事では、対話会の様子やプロジェクトメンバーの学びをお伝えします。

対話会の様子

 ご参加いただいたのは65歳以上の10名の和光市民の方々です。
 対話会ではまず、身じまい、特に高齢者サポートサービスについて実態や課題をお伝えしました。参加者の皆さんにはオンラインアンケートシステムを使って「自分が死んでしまった後のことを考えたことはあるか」「老後や死後の世話をしてくれるサービスを利用したいと思うか」といった質問に回答していただきました。

オンラインアンケートの結果を見てコメントする児玉先生

 その後、2名から3名のグループに分かれていただき、グループインタビューを行いました。最初の問いは「自分が何年後に死ぬ、と分かったら何をしたいか」でした。参加者の皆さんからは、家の中のものを整理する、行きたいところに行く、友だちに会うなど、それぞれの希望や思いが聞かれました。そこからはそれぞれのグループで、今実際にできていることといないこと、お金の使い方、親族を見送った際の経験など、自由に話していただきました。重いテーマではありますが、どのグループも和気あいあいとした雰囲気で進みました。中にはどんな逝き方が望ましいかを話して盛り上がったグループもありました。

グループインタビューの様子

プロジェクトメンバーの振り返り

京都大学/児玉先生

 印象に残ったことが三つあります。一つは、身じまいについて、かなり準備されている方が多くいらしたことでした。そうした方のお話を聞くと、親や配偶者など身近な人が亡くなって後片付けに苦労されたので、子どもには同じ面倒をかけたくないという声が聞かれました。また、家族か業者のいずれに身じまいを助けてもらいたいかという質問に対しては、家族か業者の二択ではなく、「家族にも業者にも世話にならないで、できるだけ自分で済ませたい」という声があることも分かりました。最後に、葬式にしても死後の後片付けにしても、信頼のおける業者を見つけるのが難しそうという意見が多く聞かれ、行政による認証サービスなどの重要性が示唆されました。

日本総研/沢村研究員

 私も一緒に考えてみましたが、難しい問いかけでした。今回参加された方々はご家族がいらしたので、ご家族に迷惑をかけないように、整理をするというのが第一でした。ある程度区切りがついていたら、あとは静かに、今まで通りの暮らしを続けるというお話が多かったように思います。私がインタビューをしたグループでは旅行をするとか、贅沢をするとか、会いたい人に会う、といったことが出てこなかったのは意外でしたが、人生の終わりを意識するとそういうことに意味を感じないというのも、投げやりというのではなくて、リアルな気持ちかもしれないと思いました。

日本総研/泰平研究員

 今回お話を伺うと、身じまいに備えることは経験の差も大きいようです。家族の終末期医療における意思決定、家や遺品の片づけ等のご経験から、自分が備えておくこと、家族にお願いしたいこと、民間サービスに頼める範囲など、具体的にご自身の意思を周りに伝えることができるようです。また、家の片づけ、医療・葬送の意思の表示など、自分に何かがあったときに周りが困らないように準備するともに、家族や友人との時間を大切にするなど、充実した時間を過ごし、思い出を作ることもお話にあがりました。身じまいとは、ご自身の身辺整理とともに、ご自身の大切なことに時間やお金を使うことにあるのだな、とお話を伺い感じました。

 対話会に参加した方々からは「勉強になった」「自分の身じまいを考えるきっかけとなった」といった声だけではなく「楽しかった」「すっきりした」という声も聞かれました。本プロジェクトでは、誰しもが身じまいを自分事として考え、話し合うムーブメントをつくることを目指しています。今後も、身じまいに取り組まれている方、これから取り組む方、支える方など、いろいろな立場の方々との対話を重ねていきます。

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