2024年9月15日(日)、16日(月)の2日間で、「貧困・格差・虐待の連鎖を乗り越える教育アプローチの研究開発と普及」プロジェクトの第2回「『生きる』教育」研修会を開催しました。
「『生きる』教育」は、子どもたちが人生の困難を乗り越えるため、大阪市立生野南小学校(現・田島南小中一貫校)で開発・実践されてきた教育プログラムです(*1)。今回の研修会では、「『生きる』教育」の理論的基盤を提供した西澤哲先生(山梨県立大学大学院人間福祉学研究科 教授)に集中講義をしていただきました。 この記事では、研修会の内容や様子をお伝えします。
(*1)「『生きる』教育」の詳細はプロジェクトページをご覧ください。
講義のタイトルは「虐待傾向を示す親・家族の心理的特徴の理解と支援」です。西澤先生には、2024年8月に行った第1回「『生きる』教育」研修会で「虐待が子どもに及ぼす心理的影響の理解と支援」と題して、子どもに焦点を当てたお話をしていただきました(*2)。今回は、親・家族についてのお話です。
(*2)第1回「『生きる』教育」研修会については、こちらをご覧ください。
1日目は、虐待をしてしまう親にとって、子どもへの虐待がどのような意味を持っているのかを中心にお話いただきました。虐待のケースの中でも、子どもの死亡に繋がるなど重度なケースは、世代間連鎖によるものが少なくないといいます。幼いころに愛情を注いで育ててもらえなかった経験がある人が、親となり、自らの子どもを虐待してしまう。そういった連鎖が引き起こした事件で、西澤先生は親の心理鑑定や子どもの心のケアに対応してこられました。ご自身の経験もふまえ、虐待傾向を示す親に関して、国内外の研究により明らかになってきたことをお話ししてくださいました。
2日目は、虐待を受けた子どもたちの支援についてもお話ししていただきました。西澤先生は、幼少期に虐待を受けた子どもたちが周りの大人に頼ったり甘えたりすることができず、攻撃的になる様子を何度も見てこられました。そうした子どもたちに対して、遊びを通じて心の治療を行う「ケアプレイ」を提供されています。西澤先生がケアプレイを行う動画も投影しながら、子どもの心の傷に向き合う方法を語ってくださいました。
今回の研修会では、両日とも質疑応答の時間を取っていただき、西澤先生と参加者との対話を通して虐待の問題への理解を深めることができました。研修会後のアンケートでも、「虐待をしてしまう保護者への理解が深まった」「虐待を受けた子どもへのあるべき対応を考えることができた」といった声が聞かれました。
SMBC京大スタジオでは、今後も定期的に「『生きる』教育」研修会を開催する予定です。関心を持たれた方はぜひ、イベント情報をチェックしてみてください。