2025年3月1日(土)に、「貧困・格差・虐待の連鎖を乗り越える教育アプローチの研究開発と普及」プロジェクトに関連し、「『生きる』教育」および今後の教育を考えるセミナーを実施しました。「『生きる』教育」は、子どもたちが直面する「人生の困難」を乗り越えるため、大阪市立生野南小学校(現・田島南小中一貫校)で開発・実践されてきた教育プログラムです。
今回のセミナーでは大学・企業から4名にご登壇いただきました。前半には、本プロジェクト代表者の西岡加名恵教授(京都大学大学院 教育学研究科)と山本尚毅スペシャリスト(株式会社日本総合研究所 創発戦略センター)が、講義およびワークショップの形式で「『生きる』教育」の重要性を伝えました。後半には、子どもたちの学びへの企業の貢献という点から、一木典子CSR推進部長(サントリーホールディングス株式会社 CSR推進部)と、大萱亮子上席推進役(株式会社三井住友フィナンシャルグループ兼株式会社三井住友銀行 社会的価値創造推進部)に活動をご紹介いただきました。
この記事では、セミナーの内容や様子をお伝えします。
講義:「『生きる』教育」およびプロジェクト紹介
西岡加名恵教授(京都大学大学院 教育学研究科 教授)

小学1年生~中学3年生の積み上げで行われる「『生きる』教育」プログラムを、教育方法学を専門とし、学校のカリキュラムや評価改善を研究する西岡先生に解説いただきました。西岡先生によると「『生きる』教育」の魅力は、そのコンセプトはもとより、プログラムに携わる現場の先生方の深い教材研究のもと、子どもの認識にアプローチする点にあります。「人生の困難」をすべての子どもたちが乗り越え、幸せに生きられることを目指す「『生きる』教育」の重要性を力強くお話しくださいました。
ワークショップ:「『生きる』教育」を体感するワークショップ
山本尚毅スペシャリスト(株式会社日本総合研究所 創発戦略センター)

「『生きる』教育」の9年間のプログラムのうち、中学2年生向けに行われている「リアルデートDV」をテーマとしたワークショップの一部を実施いただきました。DVには「身体的暴力」「経済的暴力」「精神的暴力」「社会的暴力」があるとされています。具体的な16のシチュエーションが示され、4つの暴力のどれに当てはまるのか、参加者の皆さんがスマートフォン等を用いて回答。皆さんの回答結果を見ながら、人によって捉え方や考え方が違うことを体感しました。
講演:「次世代エンパワメント活動」について
一木典子CSR推進部長(サントリーホールディングス株式会社 CSR推進部)

サントリーグループの企業理念「利益三分主義」(*1)の実践として2023年から取り組む「次世代エンパワメント活動 “君は未知数“」の実例をご紹介いただきました。支援が手薄と言われる10代(思春期世代)を対象に、NPO等との協働で、体験格差の解消や居場所の質・量の拡大を目指す取り組みです。2024年にサントリーが発行した「次世代エンパワメント実現に向けたTheory of Change」(*2)は、社会の様々なプレイヤーと力を合わせて取り組んでいきたいという思いが込められているとお話しいただきました。
(*1)「利益三分主義」とは: サントリーグループの企業理念として掲げる、価値観のひとつ。事業活動で得たものは、自社の再投資にとどまらず、お客様へのサービス、社会に還元する。
(*2)「次世代エンパワメント実現に向けたTheory of Change」はこちら(サントリーホールディングスのホームページに移行します)。
講演:SMBCグループにおけるこども支援の取り組み
大萱亮子上席推進役・シニアサステナビリティエキスパート(株式会社三井住友フィナンシャルグループ兼株式会社三井住友銀行 社会的価値創造推進部)

SMBCグループの中期経営計画での重点課題のひとつ「貧困・格差」に関連し、子どもたちへの教育・体験機会の提供で格差解消を目指す活動についてご紹介いただきました。7人に1人が相対的貧困に陥っている日本。ここで子どもたちの格差解消に取り組むことが社会貢献かつ将来的なビジネス環境整備につながるというお話でした。また、具体的な取り組みとして2025年4月開始予定の子ども体験施設「アトリエ・バンライ-ITABASHI-」(*3)についてお話しいただきました。
(*3)「アトリエ・バンライ-ITABASHI-」の詳細はこちら(三井住友フィナンシャルグループのホームページに移行します)。
パネルディスカッション(一木部長、大萱上席推進役、西岡教授、山本スペシャリスト)
学校現場やNPO、行政だけでは解決できない「子どもたちの貧困・格差」ですが、中でも影響が表出しやすいのが「体験へのアクセス」です。体験格差の解消に向けた取り組みを企業の立場から進めている一木部長、大萱上席推進役からは、体験のベースとなるのが「『生きる』教育」であり、学校教育として時間をかけて育まれる価値をお話しいただきました。西岡先生からは、学校で提供しきれない体験を、企業がしっかりコミットして提供することの意義が語られました。
後半では、視点やリソースの異なるプレイヤーが連携することの重要性について意見交換されました。学校現場の先生方は、人手不足や長時間勤務が指摘される中で子どもたちに向き合っておられます。学校だけではなく、大学や企業、行政などがそれぞれの得意なものを持ち寄り、学校内外で連携することで、望ましい社会の実現に近づくのではないかという期待を感じる内容となりました。

「貧困・格差」は、特定のプレイヤーだけで取り組んでも解決できない大きな社会課題です。ともに一歩踏み出す仲間を増やすため、SMBC京大スタジオでは今後も「『生きる』教育」を核としたプロジェクトの推進と情報発信を続けていきます。