《研究者コラム》ISRDプロジェクト報告②
ISRD4日本調査から見えてくる現代の中学生の様相(家庭・学校と非行経験)

 今回からは、ISRD4日本調査の結果から見えてくる現代の日本における中学生の様相の一部を紹介していきます。分析する対象は近畿圏における5つの中学校の1年生〜3年生で、有効回答数は合計1,820名でした。性別の内訳は、男子927名、女子896名、どちらにもあてはまらないと回答した生徒が22名でした(*1)。 今回は、生徒から見た「家庭・学校」と「非行経験」に焦点を当ててみましょう。
(*1)ISRD4の詳細は2025年秋頃に報告書を公開予定。

家庭と学校への印象

 生徒から見た家庭における親との関わりや、学校のクラスの印象はどのようなものなのでしょうか。
 今回の調査からは、多くの生徒が親と仲が良いと回答し、また親からの気遣いや親への配慮を意識していることがわかりました。また、親との仲の良さに関しては性差が見られ、父親とは男子が、母親とは女子が、より「仲が良い」と回答していることがわかりました。

 次に学校・クラスへの印象を見てみます。こちらも全体的に自分が属するクラスへ愛着を感じている、学校生活を楽しいと回答する生徒が多いという結果が得られました。また3つの質問全てにおいて、女子より男子の方が学校・クラスへ好印象を持っていることがわかりました。

非行経験

 次にISRDの中心的項目の一つである、非行行動を見てみましょう。ISRD4では、「落書き」「公共物損壊」「万引き」「侵入窃盗」「バイク・自動車盗」「恐喝・強盗」「凶器携帯」「集団での喧嘩」「凶器を用いた暴行」「薬物売買」「他者のプライベートな写真・動画の拡散」「SNSでの差別的な書き込み」「ネット詐欺」「ハッキング」の14項目の非行経験について、これまでの生涯で一度でも経験があるかどうかを問い、さらに一度でもある場合は過去一年の回数を尋ねています。これらのうち、最も人数が多かったものは「万引き」で、生涯で一度でも経験したと回答した生徒が62人、全体の3.5%でした。また全ての項目において、概ね男子の方が女子より経験率が高いことが示されました。
 下記グラフは、生涯に経験した非行の種類数を男女別に示したものです。男女ともに大多数が「0種類」となっています。1種類以上ありと回答したのは男子103人(11.2%)・女子59人(6.8%)と、男女とも少ないことがわかります。

 欧米諸国に比べて日本の少年非行の件数は少ないことはかねてより示されており(*2)、今回の調査においても、各非行の経験数は少ないことが示されました。また女子より男子の方が非行経験率が高いことが示されましたが、これは国際的な犯罪・非行の傾向と同様のものです。
 こうした非行行動の背景には、どういったものがあるのでしょうか。非行行動の原因に関してはいくつかの見解がありますが、その中の代表的なものとして「ボンド理論」(Hirschi 1969)というものがあります。子どもが非行を行う時、「こんな悪いことをして警察に捕まったりしたら、親が悲しむかもしれない」「補導されたことがもし噂で広まったら、大切な友人たちが離れていってしまうかもしれない」などのように、親や友人などとの社会的な繋がり(=ボンド)が、子どもを非行行動から遠ざける、と説明するのがこの理論です。これはすなわち、こうした繋がりが少ない生徒は非行に走りやすい傾向にある、ということを意味します。
 それでは、今回の調査で得られた家庭・学校への愛着(*3)の強さと、非行経験(*4)の関連性を見てみましょう。

 今回の調査からは、家庭・学校への愛着と非行行動の関連性が男女に共通してみられ、ボンド理論が示す知見と同様の傾向にあることが概ね確認されました。

(*2)法務省, 2005年, 「平成17年版犯罪白書」第4編第6章第5節
(*3)家庭への愛着は「父親との仲の良さ」「母親との仲の良さ」「親はいつもわたしを気にかけてくれる」「親に心配をかけたくない」の4項目(各項目の回答を1~5点に得点化)を合算し、点数順に3カテゴリーへと縮約した。同様に、学校への愛着は「もし転校しなければならなくなったら、わたしはさみしくなるだろう」「わたしは、朝、学校に行くのが楽しい」「わたしのクラスはおもしろい」の3項目(同)を合算し、点数順に3カテゴリーへと縮約した。
(*4)14項目の非行経験のうち、生涯で一つでも経験がある場合を「非行経験あり」とした。

参考文献

Hirschi, Travis W., 1969, Causes of Delinquency, University of California press. (=1995,森田洋司・清水新二監訳『非行の原因― 家庭・学校・ 社会のつながりを求めて』文化書房博文社)

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 次回は、ISRD4日本調査から見えてくる現代の中学生の「虐待・逆境経験」に焦点を当てて紹介していきます。

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