「発達障害特性がある方の就労における能力発揮支援」プロジェクトでは、発達障害(神経発達症)特性のある方の多様性が認められ、誰もが得意分野で活躍できる環境整備を目指しています。
プロジェクトの一環として、2025年11月28日・29日に北九州国際会議場で開催された第33回日本産業ストレス学会に、プロジェクトメンバー4名が参加し、研究成果の発表を行いました。日本産業ストレス学会は産業保健・メンタルヘルス領域の主要学会です。2025年の大会テーマは「Psychology,Biology,Technology:産業ストレスの研究と実践の交差点」であり、産業保健やウェルビーイングに関する多様な視点が提示されました。
こちらの記事では、発表した研究内容をご紹介し、その後に学会全体で得られた知見についてお伝えします。
研究中間報告「高度IT分野における神経発達症のある方の能力発揮:環境整備に向けた予備的検討(京都大学/義村さや香)」
本プロジェクトでは、神経発達症のある方が高度IT分野で能力を発揮しやすい環境づくりを目指し、個々の特性と作業環境との相性を検証する研究を進めています。今回の発表では、その研究の中間経過を報告しました。
研究では、IT業務で求められるスキルを反映した視覚探索課題を作成し、参加者に、複数の刺激の中から特定の情報を探し出すタスクを行っていただきました。いくつかの作業状況下で、自閉スペクトラム症の特性の有無によってパフォーマンスがどのように異なるかを検討しています。現段階の分析では、自閉スペクトラム症の特性がある方では、
・作業状況の違いがパフォーマンスに大きく影響しやすい
・やり方が定まれば、安定して能力発揮できる可能性がある
といった傾向が示されつつあります。
当日の会場には定員を超える参加者が集まり、神経発達症のある方の能力を活かした働き方について、高い関心が寄せられているように感じました。質疑応答では、「IT分野でどのような業務が能力発揮につながりやすいか」といった実務に即した質問も挙がりました。現場における環境整備への関心と、この研究への期待が伺えるセッションとなりました。

学会全体から得られた知見:社会的環境と制度の重要性
学会全体を通じ、産業保健・メンタルヘルス領域の研究者や企業の方々との活発な意見交換が行われました。プログラム全体では、産業保健における最新知見やDX活用、ストレスチェック制度の展望、生体リズムとメンタルヘルスの関係、ウェルビーイングと人的資本価値の向上、研究手法の基礎など、多様な視点が提示されていました。
その中で、神経発達症のある方が就労の場で抱える難しさには、取り巻く社会的環境や制度のあり方が大きく影響している可能性があると認識しました。
・神経発達症に関連するシンポジウム
・睡眠・生体リズムとメンタルヘルスの最新研究を扱うシンポジウム
これらのセッションでは、このような視点から日本の産業保健の現状を理解する上で多くの示唆を得ることができました。これらの気づきは、プロジェクトの今後の研究設計を進めていく上でも大変参考になりました。
今回の学会参加を通じ、産業保健領域における神経発達症支援の最新動向について情報が得られました。まだエビデンスが十分に蓄積されていない領域でもあるため、科学的根拠に基づいた環境づくりを引き続き検討し、神経発達症のある方々、そして多様な背景を持つ方たちが力を発揮できる社会の実現に貢献していきたいと考えています。