誰もが生前・死後の尊厳を保つための
持続可能な身じまい・意思決定とその支援

人生の身じまいの段階において個々人の尊厳を保ち、ありたい姿を実現するための意思決定の支え方を考えます。

プロジェクト内容

取り組む社会課題

 近年、高齢者の人生の身じまいに関して、意思決定が必要なことがますます多くなっています。それと同時進行で、意思決定を支援してくれる家族が少なくなっています。

 高齢になり、最終的にこの世を去るまでの道のりでは、それまでの人生になかった新しい出来事がたくさん起こりえます。たとえば、自身の体の衰え、入院や施設入所といった生活の変化などがあります。人生の身じまいの段階では、のこるものの処分など死後のことも含めて、多くの意思決定をしなければなりません。

高齢期の課題解決の場面

出所:日本総合研究所「人口減少・単身化社会における生活の質(QOL)と死の質(QODD)の担保に関する調査研究事業」

 

 これまでの日本社会では、主に若い家族が高齢者を支えることが一般的でした。家族が生前の日常生活(医療・介護、金銭、住まいなど)を手伝い、死後には火葬・埋葬や相続を担っていました。しかし今日では、高齢化が進むとともに、独居世帯などの「小さな世帯」が増えています。支えてくれる家族がいないか、いても遠くに住んでいる、家族自身も高齢化しているといった理由で、高齢者が生前・死後に家族の支援を受けられない場合が増えています。

 現代の日本社会では、自分のことは自分で決めるという自己決定が重視されています。しかし、すべてのことを死ぬまで(死んだ後のことまでも)自己決定するのは、かなり負担の大きいことであり、現実的ではありません。また、全幅の信頼をおいて決定を任せられる人を見つけることも容易ではありません。人生の身じまいの各段階において、どうすればその人の尊厳を保ち、ありたい姿を実現することができるでしょうか。人と人とのつながり、地域のつながりが希薄になる中で、今後の意思決定の支え方が問われています。

アプローチ

 生前・死後に必要になる意思決定をどのように、どこまで支えるのか。それが非常に難しい時に、周囲はどうすべきなのか。どうすれば尊厳が保てるのか。「死」は社会的にタブー視されがちな話題であり、そういった問いに対する議論は、まだまだ十分ではありません。議論をするためには、人生の終わりに私たちが何を望むのか、価値観を言語化する必要があります。

 このプロジェクトでは、学際的な研究により問題の全容を捉え、社会と問題意識を共有していきます。具体的にはまず、市民との対話により、個々人の生前・死後の尊厳についての価値観を収集します。また、先行研究の調査やさまざまな分野の専門家との対話により、この課題を解決する糸口を探ります。あわせて、社会との誰しもが身じまいを自分事として考えるきっかけを提供し、議論するムーブメントをつくることを目指します。

本プロジェクトで行うこと

  • 国内外の先行研究等の知見の整理(文献調査、現地調査)
  • 社会及びアカデミアとの対話(市民や専門家との対話会の実施)
  • 社会に対する発信・普及啓発(シンポジウム、媒体での発信等)

プロジェクト代表

京都大学大学院文学研究科
教授

児玉 聡 (こだま さとし)

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株式会社日本総合研究所
創発戦略センター
シニアスペシャリスト

沢村 香苗 (さわむら かなえ)

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プロジェクトメンバー

  • 株式会社日本総合研究所
    創発戦略センター
    インキュベーションプロデューサー

    泰平 苑子 (やすひら そのこ)

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